Stagebook MAGAGINE

舞台・演劇情報「Stagebook MAGAGINE」

RISU PRODUCE vol.20 「じぶんさがし」

撮影:RUM BRIGHON

「じぶんさがし」作・演出 松本匠 氏ロングインタビュー

2年半振りの新作という、RISU PRODUCE vol.20「じぶんさがし」で作・演出を行う松本匠さんに作品・ものづくりの想いを伺いました。そして、是近 敦之さん、世良 佑樹さん、そしてRISU PRODUCE所属の横関 健悟さんから松本さんとの出会い、今回一緒に携わる熱意を感じる内容です。

RISU PRODUCE 主宰 松本 匠(マツモト タクミ)
1971年4月1日大阪府生まれ。RISU PRODUCE 主宰・日本劇作家協会会員。
高校卒業後、地元のホテルに就職するが映画俳優になる為に半年で退社し上京。劇団東京キッドブラザーズの15期研究生として入団するも数ヶ月で退団。その後、エル・カンパニーの全作品に出演。1998年/1999年には舞台「THE WINDS OF GOD」では2年連続NYのオフブロードウェイの舞台に立つ。1999年からRISU PRODUCEの主宰として、作・演出を担当。特技はボクシングでC級ライセンスを取得。ニックネームはリス。このリスがRISU PRODUCEの由来。2013年から俳優の川平慈英らと共に東京演者兄弟会(Tokyo Actor Brother United)tABuを旗揚げし演劇活動の場をさらに広げる。
Twitter:@takumi_risupro

今回初めての試みの舞台「じぶんさがし」。

ーー 最初の俳優活動デビューの頃からどんなキャリアを築いてきたのか。

松本:中高校を卒業して、すぐに地元のホテルに勤めていたんですけど、いろんなことがあり辞めまして、上京したんです。ある劇団の研究生として入ったんですけど、東京に来た理由って、映画俳優になりたくて。きっかけはどっか劇団入ればすぐ売れるだろうという浅はかな考えだったんですね。ところが入ったところが、研究生50人いる中で、緩い感じがしたんですよね。演劇の「え」の字も知らない僕がいうのもおかしいんですけども…。それで3ヶ月で辞めました。
その当時、紙媒体のぴあで演劇のワークショップの記事を見て、キャスティングディレクターの奈良橋陽子さんのユナイテッド・パフォーマーズ・スタジオのアクティブセミナーをやっていたので、そこに定期的に通うようになったんですね。そうこうしていると、別所哲也さんだったり今井雅之さんだったりがいらっしゃるなかで、たまたま今井さんとお話しする機会があったときに同じ関西人だということで、何かこいつおもしろいなということで飲みに誘っていただく機会が多くなりました。そういう経緯の中で、オーディションを受けてある作品に出た時に、主演が今井雅之さんだったんですけども、その前にも面識があったのでそこから急激に好意にさせていただくようになりまして。
出会いから1年後くらいですかね。今井さんが立ち上げたエルカンパニーという劇団があるんですけど、そこの舞台に出させていただくような形で、というのがまず1つ目の大きな出会いです。その二十代のときに自分で劇団やったほうがいいよ、と。本を書いたほうがいい、と。役者は待つ身だからどんどん自分から発信したほうがいい、と。事務所なんかあてにならない、ということを言ってくださってたんですけど、僕はそういう気持ちはなかったんですが、28、29歳の時になんかやってみようかなと。今井さんが作・演出、主演という形で世に「THE WINDS OF GOD」という作品が出て、そして私も出るきっかけになったというのをちょっと真似たと言いますか。僕も旗揚げから主演ででずっとやらせていただいたんですけれども、40歳くらいですかね。今から6、7年前から作・演出・出演するというのは、どうしても最後の稽古3日間4日間、自分が稽古に入るというのがもう、役者さんに対して失礼だし、あとお客さんに対してなんとかそれまでの経験値みたいなので持っていけるかなと思ったんですけれども、それはいけないということに気づきました。それから役を本当に減らし減らし、今回から僕はもうでない、と。それが今回初めての試みの舞台になるんです。

RISU PRODUCE vol.20 「じぶんさがし」

右:是近 敦之(コレチカ アツシ)
1978年1月5日神奈川県生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
ドラマ、映画、舞台、CMと幅広く活動。主な出演歴はNHK『大河ドラマ「龍馬伝」』、フジテレビ『ハチミツとクローバー』、テレビ朝日『家政夫のミタゾノ』、映画『SP THE MOTION PICTURE 革命篇』など今後の活躍も期待される。
Twitter:@a_korechika

左:世良 佑樹(セラ ユウキ)
1986年10月11日大阪府生まれ。フリースタイルカンパニー所属。
多数の映画、舞台に出演。趣味はギター、特技はピンポンパンゲーム・顔面体操。主な出演作品として、映画『光と血』『ラストゲーム』『ビートロッククラブ』、舞台『秘密合コン倶楽部』『D-BOYS STAGE vol.3』『D-BOYS STAGE vol.2』等。
Twitter:@yuk1ng011

20作品目の節目にいままでお世話になった方たちとものづくりをしたい

ーー 今回の出演者の方との出会いとは。

松本:是近さんからお話しさせていただきますと、エルカンパニーさんのある舞台にお客さんとして観劇していただいていて、まずそこで一方的に面識がありました。で、今回も出演いただいている松本勝さんがそのときにご一緒されてまして、なぜか分からないんですが直感で、もしよろしければご一緒させてください、と吉本さんにご連絡しましてご承諾いただきました。そして今回が3本目の作品という形になりますね。世良さんは仲間内のある劇団にご出演されているのを稽古場で見た時に、なんかいいな!と思いまして、いつかご一緒できればな、ということで3年前ある作品に出ていただきました。それから作品で言いますと5本目になるんですね。他の皆さんもそうです。今回20回目の作品になるので、いままではオーディションもやってたんですけれども、今回は一度ご一緒させていただいている皆さんで作品・ものづくりをやりたいなというのがありました。

ーー ものづくりに対する松本さんの印象とは。

是近:すごく丁寧な方だな、と(笑)。ずっと役者をやってこられてたので、役者の視点から演出なさる時にすごく考えてくださっているので、演出だけでやってこられてる演出家の方とはちょっと違うな、というのは感じますね。準備する時間も、役者だったらこれくらい時間がかかるだろうということを考えてくださって、僕はすごく稽古がしやすい。あと、役者の意見を聞いてくださるので、一緒につくりあげていく、というところで。もちろん最終的に決定は松本さんがなさるんですけどそこの過程が積み上がっていくという感覚が強いです。

世良:初めての印象は…。ずっと噂は聞いてたんですよ(笑)。松本さんという方がいるっていうことを。その前にも一度、松本さんの作品を拝見させていただいてたので勝手に怖いイメージを持っていました。でも来た時の、立ち振る舞い方や話し方、ものすごい物腰が柔らかくて全然思ってた方と違う、と。そこから初めてご一緒させていただいた時に、初めてプロとして扱っていただけた感覚があって、この方と一緒に作品づくりをしたいなと、初めてご一緒させていただいた時に芽生えました。それで気づけば今回5作品目ですか。ありがたいですし、毎度毎度いろんな挑戦をさせていただける。毎日必死ですけどやりがいはすごく感じさせていただいています。

RISU PRODUCE vol.20 「じぶんさがし」

横関 健悟(ヨコゼキ ケンゴ)
1981年12月12日京都府生まれ。RISU PRODUCE所属。
18歳の時に東京の専門学校に入学し演劇を学ぶ。その後、劇団青年座研究所に入所。卒業後は声優として活動しながら舞台出演や舞台制作に携わる。2008年の「しがらみの向こうに」でRISU PRODUCE初参加。舞台以外にも声優としても活動。
Twitter:@kengo_yokozeki

横関:僕は作品を知っていて、その後ご挨拶する機会があったんですが、最初ものすごく怖い印象でした。(松本さんが)初めての出会いの時が夏でタンクトップだったんですよ(笑)。シャツを肩にかけて颯爽と歩いてる姿がかっこよかったんですけど、すごく怖かったんです。その時ちょうど写真撮影でいろんな役者の先輩方がいらっしゃる中で、みんな屈強な男たちで(笑)。僕はここでやっていけるのか、という第一印象でした。

ーー 本日初めてインタビューでお会いさせていただいた印象としてはすごく柔らかくて優しいですが。

松本:あー!もうこのままです(笑)。世の中に僕みたいな人間が1人くらいいてもいいかなって。

ーー これから劇団をどのように育てていきたいですか。

松本:30代の頃でしたら、熱い想いを…絶対ドカーンと言って、岸田國士戯曲賞とったりとか言ってたんですけれど、いま47歳になって常にお客さんのことを考えて作品づくりに励めれば。小劇場だとお客さんが固まってくると言いますか、OLさんの層が来ていただけるということはなかなかないんですね。当然、僕の知り合いや是近さんの知り合いでOLさんはいらっしゃいますけれども、まだまだそういう比率が上がってないと思ってます。以前から僕はカーテンコールという言葉を使わせていただいておりますけれども、演劇の裾野を広げるためにこれからも、好みはありますけども、来ていただくお客さんに何かきてよかったな、と。ありきたりなんですけれども、それが非常に難しいんですけれども本気でそういうふうに思っていただける作品を作りたい。今回もそうですし今後も、生意気な言葉で言いますと「使命」だと思っておりますので。それって演劇を観に行って、正直つまんないお芝居観たらもういいや、と。3、4千円高い、と。それが例えば、30代の僕でしたら他とは違うんです!と言いますけれども。今もポロッと言ってますけどね(笑)。

ーー 熱いですね!まだまだ若い頃の精神がまだ燃え盛ってるんだと思います。

松本:そうですね(笑)。

ーー 演劇の世界でのメジャーとは。

松本:簡単にわかりやすく言いますと、長塚さんとか今では作品が多く、再放送とかされてますけれども。いわゆる、長塚さんだったり大人計画さんだったり、一般の人もなんか大人計画って聞いたことある、とか。観なくても知ってるとか。そういう僕の価値観ですかね。

RISU PRODUCE vol.20 「じぶんさがし」

劇団の稽古場で人々の葛藤を描き、心に変化が起きていく。

ーー じぶんさがし、どういったストーリーで構成されているのか。

松本:顔合わせの3日前に当初立ち飲み屋でいろんな人が行き交う会話劇をつくろうと思ってたんですけれども、僕の中で無理だと、少し違うなと思いまして。今回、ある劇団の話を、劇団の稽古場。こういう場所(インタビューは稽古場にて)が物語の主軸になっております。

ーー 是近さんと世良さんは劇中どういった役柄を。

是近:その劇団の作・演出をしているキャラクターをさせていただくことになってます。もともと30年近く続いている劇団で俳優としてキャリアをスタートしたんですけど、ある事故があって、役者としては活動ができなくなり作・演出家になりました。

世良:僕はどの劇団でもいろんな色がある中で自分が最後に選んだ劇団がここだった。ここで最後、自分の何かを残したいということでオーディションに受けに来る劇団の新人役者をやらせていただいてます。

ーー なるほど。是近さんは役の中でいう松本さんですよね。横関さんはどんな役柄を。

横関:僕も同じく劇団員になりたくて、オーディションに参加して脱サラして、家庭もあるのに役者を志してきた。そこはいろんな理由があるんですけれども、その理由は作品をみていただければと。

松本:その劇団に週刊誌が特集記事をかいてくださると。週刊ミライの坂下という香取さんが演じる役と、中尾さんが演じる吉井カメラマン役が本当にこういう感じで取材をストーリーに展開していくんですね。外部の目から演劇、劇団の裏側を見ながらアルバイトしながらもやらなくちゃいけない。ある意味30代で普通の会社員でしたら、結婚して生活も普通に過ごせる環境は普通だと。でも劇団員の人たちはそうじゃない、というのをカメラマンと記者が追っていく中で、自分の仕事に対して、生き方に対して自分の中に疑問を持ってた編集部の坂下さんが変わっていき、ありのままの記事を書き、そして同世代の劇団員とカメラマンの吉井という役も何かが変わっていく、という外の側の世界が主軸であります。劇団の貧乏臭くて俺たちって苦労してるんだよねということは一切物語には出てこないんですよね。きっと僕が思うのはいろいろあるけれども、頑張っていこうよ。舞台を観にきてくれたお客さまが、たまたま観た舞台は劇団というストーリー展開だったけれど、どんどん私たちにも響いてくるなというふうな感じで、演技をしているという場面はほぼないです。裏側、裏側、裏側の葛藤を少しコメディ要素も入れながら社会派という表現をたまに演劇サイトの方たちがかかれてあるような、そういう感じです。きっと今までご覧になられた演劇、人たちとは違うなと。好みはありますけれど、感じていただけるのではないかなと思います。

ーー どんな人に観ていただきたいか。

松本:当然演劇関係の方もそうなんですけど、普通の方に。丸の内のOLさんがいいんです。普通の方に、初めて演劇を観る方に観ていただきたいですね。そこで演劇ってなんかパワーもらえるじゃん、とか。なんか頑張ろうかな、とか。演劇のこと勘違いしてたな、とか。そういう人に観ていただきたいですね。

是近:なかなか演劇を観るきっかけだったりとか触れる機会だったりとか、一般の方だと少ない中で、赤坂という土地柄もあって普段演劇に触れてない方がアクセスしやすい場所だったりします。内容自体は演劇を描いてるんですけど、結局それってどんな仕事にも当てはまるようなメッセージ性が散りばめられているストーリーなので、それを観ていただくことによって今の自分を見直すきっかけになるとか、新しいチャレンジだったりとか。この舞台を観たからちょっとやってみようか、と。観る前と観た後では何かしら少し変わっていただけるような方々だったらどなたにでも観ていただけるようなストーリーだと思います。

世良:僕は同世代に観ていただきたいですね。今年32歳になる年なんですけど、僕自身が30歳を超える時くらいから社会のことをちゃんと考えないといけないな、と考えるようになったんですよね。30歳を超えたら、少しずつ地位を手に入れてる方もいたりとか。その人たちも責任感とかが変わってきて、いろんな人に対する考え方が変わってくる年だと思うんですよ。結婚だったりとかそういうことも含め。自分自身にもそういう葛藤があったので、なおさら作品の中でどう感じてもらえるのかはまだ分からないですけど、観ていただいて何かを持って帰っていただけることは、自負しているというか。それくらい胸張って毎日ここに来てるので。だから僕は同世代の方々に来ていただけると嬉しいですね。

横関:僕は「じぶんさがし」って誰しもが鑑みる言葉と言いますか。どの職業であっても、どんな人であっても一回は自分を見つめ直す時が来ると思うんですけど。悩んでたり苦しんでたりとかそういう人に観ていただきたいというのはもちろんなんですけど。是近さんもおっしゃっていたように観て、何かが変わっていただけるきっかけになっていただければ嬉しいです。普段、自分がやりたいことだったり夢や希望だったり、こういう理想があって現実が違かったりとか、そういうことに負けずに頑張ろうって思ってもらえるように、僕らも舞台上でエネルギー出して頑張るので、そういう方に観ていただきたいです。

RISU PRODUCE vol.20 「じぶんさがし」

ーー とても力強い作品になってきそうな感じがしますね。

松本:そうですね。ありきたりの言葉で何かを感じていただきたい、ということで。いろいろな劇団の方々、映画でもそうですし、おっしゃる言葉。よく目にし、耳にしますけど、誰しもその思いがあると思うんですね。でも誰にも負けないくらい、僕たちと敢えてここで使わせていただきますが、そういう思いでつくっております。
この日、どこかの稽古場で一生懸命稽古されていて、ものを作ってらっしゃるんですけど。映画はよくあるんですよ。おー、いいなぁ…。という。でも僕は舞台を観に行って感動するのがほとんどないんです。自分がやってるからという部分もどこかであると思うんですけど、なんかないんですよ。知り合いの舞台を観に行かせていただいても、なんかもらえるかなと思ってもほぼほぼないんですよね。終わって、お疲れ様でした、って言葉を選んでいる自分が多々あるんです。逆に考えると、僕たちは恐ろしいことをやっているんだなって。4,500円あればフルコース食べれますからね(笑)。それがすごいことをやってるっていうのが日に日に感じているという。そういうこともお金を支払って観劇していただくっていう重みも歳重ねるごとにそこに対する責任感がのしかかってくるんですよね。
もうひとつ言いますと、本がつまんなければ俳優の皆さんの価値観まで評価を下げることになると思うんです。映画でもドラマでも本ありきだと思ってるので、これが崩れるとまず終わりだと思ってます。せっかくご出演していただいて1ヶ月お時間預けてくださって、是近さんや世良さん、他の出演者の皆さんに舞台上で、「是近さん、なんだよこの舞台。あんなにいい芝居するのにこんなのに出てるんだ。」とお客さんに言われた時は僕の責任なんで。僕は責任者なので、けちょんけちょんに言われようが「なにあの演出家、あの脚本家が悪いんだ。」と本番前にお伝えしてるんですけど。
毎回そういうつもりで作品と向き合って。勝ち負けじゃないですけど、どこよりもいいと思っていただけるような思いはすごく強いですね。

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RISU PRODUCE vol.20 「じぶんさがし」
RISU PRODUCE vol.20

「じぶんさがし」
作・演出 松本 匠

いつしか僕は旅に出ていた。
行く当てのない旅に。
この旅は立ち止まる事などなく、
永遠無窮の旅である事を最近になって初めて気付いた。
何故なら僕は生まれた時から旅に出ているからだった・・・

2018年4月25日(水)〜30日(月/祝)
赤坂RED/THEATER

【CAST】
横関 健悟(RISU PRODUCE)
谷口 勇樹(RISU PRODUCE)

是近 敦之
世良 佑樹

香取 佑奈
吉川 柳太
飯泉 博道
朝枝 知紘
中尾 太一

齋賀 正和
松本 勝

公式ウェブサイト:http://risuproduce.s2.bindsite.jp/