日本では毎月1,000を超える舞台公演があり、どれひとつとってもそれぞれの個性があるように思います。
今回そんな多種多様な演劇があるなか、StagebookMAGAZINEではとてもユニークで詩的な「チーム夜営」の大竹竜平さんに迫りました。
大竹竜平(グラフィックデザイナー) 1988年生まれ。デザイナー。 チーム夜営では脚本と宣伝美術を担当。2017年、チーム夜営「タイトルはご自由に。」が第5回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞。
HP : ryuhei-otake.com
まず「チーム夜営」について教えてもらえますか。
大竹 2012年5月、武蔵野美術大学の卒業生を中心に結成しました。
昼間は美術、映像、グラフィックデザイン、イラストレーションなどの分野で活動するメンバーが、夜な夜なここに戻ってきて、演劇をつくるチームです。
が、実は演劇が本業の人は、ほとんどいません。
年に1回ほどしか公演ができないので、他の劇団に比べて上演ペースはとても遅いと思いますが、本公演以外にもそれぞれ得意なグラフィックデザインやイラストレーションを活かしてWEBマガジンを作ったりもしてます。
今回も脚本を担当されていますが、いつもどのようなところからインスピレーションを受けたりするのでしょうか?
大竹 天邪鬼なだけかもしれませんが、演劇作品や脚本から刺激を受けることはほとんどないです。
映画の字幕や小説の台詞、日常の会話や事務的な請求書・説明書などなど、目に付いたフレーズが気になって膨らんでゆきます。
今回の新作「記憶の人」は「記憶」という人間の曖昧な習性と「記録」という物理メディアによる保存方法をテーマにしたお話で、「私たちは記録媒体なのか?」「過去は思い出したときにだけ存在するんじゃないか?」というようなことを考えながら書きました。
今現在は著作権法に出てくる「私的使用のための複製」というフレーズが語感も含めて気になっているので、次回作は多分そこから何らかの形になるのだろうと期待しています。
各々の得意な分野を生かしながら創作を行なっている、と認識しているのですが公演での俳優(表現者)はどのようにキャスティングされているのでしょうか?
大竹 出演者の少ない作品が多かったので第2回公演から俳優は馬場太史(俳優座)と高澤聡美の半固定状態です。
どうしても人数が足りない時は大学の後輩などを誘ったりしていますが、ちょっと閉鎖的かもしれません。
同じ美大出身者のチーム夜営は美術や映像など裏方が中心になって動くことが多いんですが、自分たちの知り合いや演劇関係者に関わらず、もっといろんな人と一緒にできればいいなと常々思っています。
劇団またはチームとひとくくりにしても、スタイルがユニークだと感じているのですが、「チーム夜営」の目指すところはなんでしょうか?
大竹 自分たちで決めたスタイルは特にありませんが、メンバーそれぞれが得意な仕事を惜しみなく発揮できたらと思っています。
個人の嗜好や仕事が変わっていけば、おのずとチームのスタイルも変わっていくように思います。
個人的にいつも意識していることは少し背伸びをすることです。
単純に創作する上での技術的な話でもあるんですが、自分自身や身の回りの社会がこれからどう変化してゆくのか、10年後、100年後のことを想像しながら、そこに少しでも近づいたり、逆に離れてみたりできるようにと考えています。
だから毎回SF的な要素が多いのかもしれません。今気がつきました。
今回の公演「記憶の人」ですが、どのような方(世代とか、どのような感度を持った方)に観ていただきたいなどありますか?
大竹 祖父や祖母、父や母の記憶がおぼろげにでもある人であれば、何かしら伝わるような気がしています。
今回の公演「記憶の人」の見どころなど、メッセージありましたら、最後におひとことください。
大竹 今までSF的なストーリーや表現方法が多かったのですが、今回は少し違います。
超記憶力という特殊な人物をモデルにしたお話ではありますが、ごくごく一般的な家族史でもあります。
チーム夜営らしく表現できるよう制作中です。
チーム夜営vol.5「記憶の人」 2017年11月3日(金・祝)〜5日(日)/yahiro8
“忘れることを知らない”
船瀬昨良は忘れることができない。
子どもの頃から人並み外れた記憶力を持った船瀬昨良は、
日常の些細なことを全て覚えてしまう。
結婚し子どもができ、歳をとるにつれて、
彼女は膨大な記憶に押しつぶされて綿のように疲れてしまった。
だんだんと日常生活が送れなくなった彼女は自分の記憶を整理・統一するため、
同じ服を着て同じ行動をとるようになる。
やがて年老いた昨良は回想の中に閉じこもり、
何度も何度も同じ時間を過ごすことになってしまう。
脚本 大竹竜平 出演 高澤聡美 馬場太史(俳優座)
演出 チーム夜営(大竹竜平、内田圭、小林弘樹、高澤聡美、寺本愛)
舞台美術 小林峻也 湯浅美穂里 音楽・音響 熊谷秀哉 照明 竹元楓 映像 内田圭 衣装 生田志織
イラストレーション 寺本愛 宣伝美術 大竹竜平 制作 チーム夜営
公演日程
11月3日(金・祝) 16:00 / 19:00
11月4日(土) 16:00 / 19:00
11月5日(日) 14:00 / 18:00
チケット料金
前売券 2,500円
当日券 3,000円