ミュージカルで活躍する加藤和樹さんが本格的な悪役に挑戦し、元宝塚宙組トップスター凰稀かなめさんが盲目の若妻を演じることで話題の『暗くなるまで待って』。1966年にブロードウェーで初演、1967年にはオードリー・ヘプバーン主演で映画化された名作が、2019年1月25日(金)に東京・サンシャイン劇場で開幕した。日本では10年ぶりの再演となる。
初日に先立ち1月24日(木)、W主演の加藤和樹と凰稀かなめ、高橋光臣、猪塚健太、松田悟志、演出を手掛ける深作健太ら(敬称略)が登壇した初日前囲み会見と公開舞台稽古が行われた。これから始まるサスペンス劇に登場する出演者とは思えないほど和気あいあいとした雰囲気の中で会見は進んだ。
登壇した6人の主なコメントは以下のとおり。
加藤和樹(ロート):正直いい意味でも悪い意味でもどうなるか分からないですが、果たしてどう見えるのかというプレッシャーを感じつつ、いい緊張感もあります。ロートを掘り下げれば掘り下げるほどいろいろな表現の仕方があるなと思っていて、やればやるほど、どれも間違いではないし正解でもない気がして、そこが面白いと思っています。もちろん『暗くなるまで待って』というタイトルなので暗闇の対決が見どころですけど、一人ひとりの人間性を感じてもらえたらと思います。
凰稀かなめ(スージー):今日の舞台稽古まで、いろいろな変更点がありました。もっとよくするためにスタッフの方々や出演者がいろいろ話し合いながら作ってきた舞台になっております。私自身サスペンスは初めてなので、お客様にどういう反応をしていただけるか全く分からないのでかなりドキドキしています。人と人とのかかわり合いの間に生まれてくるものがそれぞれありますので、そういう流れを見ていくのも面白いのかなと思っています。
高橋光臣(マイク):まずはここまで稽古してきて、このメンバーでできたことがすごく楽しかったです。それをお客様に感じていただけると思います。僕は面白いことをするのが大好きで、この作品に関してはそれを封印しなければならないためストレスは半端ないですが(笑)音や静寂がテーマになっている舞台をぜひ楽しんでもらえたらと思います。
猪塚健太(クロ―カー):1カ月近く稽古をしてきて昨日から舞台稽古が始まったんですけど、すごいものができたなと確信を得たので、早く観に来た人をゾクゾクさせたいです。この作品は体感型サスペンスエンターテインメントだと思っているのでお客様が一緒に体感して『暗くなるまで待って』の世界にどっぷりとつかってもらいたいなと思っています。
松田悟志(サム):珍しいくらい同世代が集まっていて、僕はそういう作品が初めてなので、ある種クラスメートのような仲間意識が芽生え、些細なことでも積極的に話し合うすごく素敵な現場でした。この舞台はどの人の視点に立ってもハラハラドキドキすることは間違いないと思います。観てくださる方、それぞれの気持ちで観て、味わっていただきたいです。
深作健太:この作品はおととし亡くなられた演出家の青井陽治先生や美術の朝倉摂さんをはじめ、多くの先輩たちが作ってきた作品です。それを演出させていただくのは、喜びと同時にプレッシャーを感じております。でも素晴らしい役者さんたち、デビュー作以来ずっと戦友だと思っております加藤くんや、今回初めてご一緒するとても頼りになる凰稀かなめさんをはじめ、皆さんと一緒に作っている感じがする作品です。このカンパニーのあたたかさをそのまま舞台上に持っていければと思っております。生の舞台でしか感じられない本当のサスペンス劇を届けることができたらと思います。ラスト20分、暗闇の中でのクライマックスは、本当に素敵な仕上がりになろうとしていますし、お客様も劇場で体感して怖がっていただければと思います。
ここからは公開舞台稽古の模様をお伝えする。
舞台が始まる前に会場に響くカチカチという時計の音が、これから始めるサスペンス劇の緊張感を否が応でも高めていた。麻薬が入っている人形を取り返そうと悪党3人組(ロート、マイク、クローカー)があの手この手で盲目のスージーを翻弄していく物語が始まる。
最初に悪党3人組のロート、マイク、クローカーの出会いが描かれるが、ロート(加藤和樹)の表情が冷ややかで怖い。目的のためには手段を選ばない、他の2人とは明らかに違う「真の悪」がそこにあった。
3人の暗黒のやり取りから一転して、スージー(凰稀かなめ)とサム(松田悟志)が舞台上に登場すると、あたたかい空気に包みこまれる。とにかく盲目の若妻スージーのかわいらしいこと! 愚痴を言うときの表情、サムにからかわれてすねるところ、すべてにおいてスージーの魅力満載だ。そして盲目だからといって特別扱いをしない、サムの愛情あふれるセリフの一つひとつに心が温まる。
もう一つの物語といっていいのがスージーとグローリア(黒澤美澪奈)の関係だ。最初はお互いに反目し合っているが、スージーに降りかかるさまざまな出来事を通じて結束を高めていく。スージーとグローリアの心境の変化がとてもうまく表現されているし、スージーを演じる凰稀さんが囲み会見で、2人が交わすセリフはとても重要な意味があると述べているのもうなずける。
物語の中盤から悪党3人組は次々にスージーを翻弄する。計画どおりに進んでいくかに思われたが、視覚を失ったスージーならではの感覚と知性がそれを上回る。次々に登場する人物に不自然さを感じ、スージーは3人と対決するためグローリアに協力をしてもらいながら策を練る。
そしてクライマックスは最後の暗闇の戦いだ。狂気としか表現しようのないロートは、観ていて背筋が凍る。Stagebook MAGAZINEのインタビューで凰稀さんが「相当いたぶられます」と言っていたとおり、ロートは容赦なくスージーを攻撃するが、意外だったのはロートの一方的な攻撃だけで終わらないところだ。2人の鬼気迫る応酬劇に息を止めて見入ってしまった。
終演後の挨拶で、暗闇の戦いを終えたばかりの加藤さんと凰稀さんは文字通り脱力状態で、特に凰稀さんはしばらく盲目のスージーから脱することができない様子だった。
スージーになりきって観ることもロートになりきって観ることもできるこの作品。名作ならではの手に汗を握るサスペンスだけではない人間模様を、とくとご覧になってほしい。
取材、文、撮影 秋乃 麻桔
公演名:『暗くなるまで待って』
作:フレデリック・ノット
訳:平田綾子
演出:深作健太
出演:加藤和樹 凰稀かなめ 高橋光臣 猪塚健太 松田悟志 黒澤美澪奈 九内健太 橋谷拓玖
公演日程:2019年1月25日(金)~2月3日(日)
会場:サンシャイン劇場
料金:8,800円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
各種プレイガイド情報
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