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阪本浩之

雀組ホエールズ『享保の暗闘~吉宗と宗春』 主演・阪本浩之インタビュー「観に来た人の気分が上がる作品にしたい」

2018年11月14日(水)から11月25日(日)にかけて、シアターグリーンBOX in BOX THEATERで、雀組ホエールズ第14回公演『享保の暗闘~吉宗と宗春』が上演される。社会派の芝居に定評のある劇団が、今回時代劇を上演する。

初日が5日後に迫った中、主演の徳川宗春を演じる阪本浩之さんに話を聞くことができた。今回の公演にかける意気込みと、これからの雀組ホエールズについて熱く語ってもらったので紹介する。

――今回の公演はどのような内容の作品でしょうか?

 今回は江戸中期、享保の改革が行われた時代に生きた、徳川吉宗と徳川宗春の話です。徳川宗春って、知らない人も多いと思うのですが、実は愛知県で「好きな偉人は誰ですか?」と聞くと、1位に織田信長、2位に豊臣秀吉、3位が徳川宗春というぐらい人気がある人なんです。

じゃあ、徳川宗春は何をした人かというと、物語の中でもいろいろ説明をしていますが、例えば、今、愛知県のことを「中京」と言いますけど、中京という言葉を作ったのは宗春ですし、名古屋を大都市にしたのも宗春なんです。

徳川御三家の筆頭である尾張は、享保の改革で儲かるのは国だけなので民が儲かるシステムにしたいと、当時としては斬新な金融緩和政策を行ったんです。徳川幕府は「質素にお金を使わない」尾張は「お金をどんどん使え」というふうに逆のことをやったんですね。

つまり吉宗の享保の改革と真っ向からぶつかるわけです。でも吉宗と宗春は決して仲が悪かったわけではないんです。吉宗は徳川光貞の四男で、宗春は綱誠の二十男。本来二人とも将軍や藩主になれる立場ではなかったのです。でもに民と接する機会があった者同士、民のことをもっと考えていこうよということで分かり合っていました。

でも吉宗の周りにいて幕府を動かしていた松平乗邑(まつだいら・のりさと)や、神尾春央(かんわ・はるひで)が、民から人気が出てきた宗春をじゃまに思ったわけです。そういうことを背景に、いろいろなことが行われたんじゃないのかなということを物語にしました。

享保の暗闘~吉宗と宗春(阪本浩之)

――阪本さんは主演の徳川宗春を演じられますが、どんな思いで臨んでいますか?

実は、宗春は8年間しか藩主をやっていません。その短い間で名古屋を大都市にして中京という名前をつけ、名古屋の派手な文化を作り出したわけです。当時からすると時代の先駆けを行く人だったのではないかと思います。

宗春が藩主になって8年後、吉宗に「藩主を辞めろ」と言われ、彼は潔く辞めました。その後実際のところは分かりませんが、幕府に謀反を起こそうとしたということで、宗春は亡くなってからも100年ぐらい江戸幕府から許されなかったようです。

そんな宗春ですが、愛知県の人にとっては人気の偉人です。ただ時世に合わなかったというだけですから、宗春がどれだけ魅力的な人だったかということをお客さんに伝えられればいいかなと思います。皆さんが知っている徳川吉宗に、こんなライバルがいたんだ、歴史って面白いなというところをお客さんに伝えたいですね。

――役作りはどのようにされましたか?

もちろん台本ありきのことなので、主宰の佐藤雀が描きたい世界観の中の人物にすることをベースにして、お客さんに分かりやすく見やすい役作りを心掛けました。堅苦しいばかりの時代劇ではなく笑えて、時には平成30年の言葉遣いでしゃべる瞬間もあったりする一方で、締めるところはちゃんと時代劇として締めています。

この時代、小難しい話がたくさん出るので、難しい話を分かりやすく笑って見ていただいて、観たあとに何かを感じていただければいいかなと思います。

阪本浩之

――一つの作品を作り上げていくことは大変だと思いますが、今回はいかがでしたか?

 一番難しかったのは、歴史をどうお客さんに分かりやすく伝えるかというところでしたね。どこまで崩すのか、ここはちゃんと時代劇をやったほうがいいのではないか、ここは現代言葉にしようかとか、さじ加減をみんなでいろいろ話し合いました。いっそのことスマホを出してもいいんじゃないの? という意見も出たりしましたし。

どこまで崩すのかというバランスは演出も悩みましたし、僕らもそこが一番難しかったです。享保の改革といっても別に何か特別なことがあったわけではありませんし、あまり華やかな時代ではないですからね。

あとは、今回の出演者はいろいろなジャンルで活躍している方がいっぱいいらっしゃることです。仁科克基くん、神木優くん、松井悠くん、日出郎さんなど、本当にさまざまです。この方たちの魅力をお客様にどうやって伝えるのか、そして活動をしてきた環境が違う人たちと一つのものを作り上げることは大変でしたけど、楽しい作業でもありました

――今回の作品の最大の見どころはなんですか?

民衆の力でしょうか。江戸時代の政治は武士が動かしていましたし、今の世の中も政治家や官僚たちが動かしている。でも、民衆の力はかならずあって。同じ思いを持った人たちが集まるとすごい力になるというところを表現したいですね。

あとは今回総勢27名が出演いたします。享保の改革時代に禁止されていた祭りを宗春が10年ぶりに復活させたシーンで踊りを披露するのですが、とても盛り上がるのではないかと思います。

阪本浩之

――今後雀組ホエールズが目指していくところはどこですか?

うちの劇団が上演する作品は2パターンあります。一つは今回のように、「ザ・エンターテインメント」というもの。そしてもう一つは前回公演の『硝子の獣』のように、映画やテレビドラマで取り上げられそうな社会的なテーマを、舞台ならではの表現で見せるというものです。

うちの主宰のモットーは、小劇場を初めて観る人が「また小劇場を観てみたい。他の劇団の作品も観てみたい」と思えるような作品を作りたいということです。もちろん劇団として大きくなり、公演回数も20回30回と続けていきたいのですが、その中で小劇場の文化が広がっていくように何かしらやっていきたいというのが劇団の思いです。

正直どこまでが小劇場なのかって、定義づけは難しいですよね。ですから最終的には、すごくおおげさな表現ですけど、例えば大きいハコの日本武道館で公演をやって、「日本武道館は小劇場だ」と言えるようになれるといいかなと思います。

――最後に、公演に向けての意気込みをお願いいたします。

僕たちの一番の思いは、チケットを購入して2時間という貴重な時間を使って来ていただいたお客様に「楽しかった」と感じてもらいたいということです。

この作品を観たことによって、例えば翌日会社に行って「おはようございます!」といつもよりワントーン高い声で言えるような気持ちになっていただきたい、そういうことが、僕らのモットーです。今回もそういう作品を作ったので、ぜひ観に来ていただいてその気持ちを感じ取っていただければいいかなと思います。

今回の作品は子どもから年配の方まで楽しめるエンターテインメント時代劇となっています。時代劇というとハードルが高いと思う若い世代や女性の方々がいるかもしれませんが、この作品を観て「時代劇って面白い。歴史ってこんなに面白いんだ」ということを感じてもらえると、うれしいです。

初日を目前に控え、まさに劇団員全員が一丸となって稽古に臨んでいる中、取材に応じて下さった阪本さん。取材後「宗春の衣装は、かなり豪華なんですよ」と実際に着る衣装を見せてくださったのだが、とても鮮やかで見るからに豪華なものだった。ストーリー展開だけではなく、こうした衣装に注目してみると、さらに楽しめるかもしれない。

取材・文:吉永 麻桔
稽古場画像提供:雀組ホエールズ

 

享保の暗闘~吉宗と宗春(阪本浩之) 享保の暗闘~吉宗と宗春(阪本浩之)

公演名:『享保の暗闘~吉宗と宗春』

作・演出:佐藤 雀
出演:阪本浩之 夏井貴浩 松井悠 神木優 仁科克基 村尾俊明 鈴木ゆか
卯ノ原圭吾 西野純一郎 竹村真 戸張美佳 大八木八大 南野真一郎
曜子 沢崎麻衣 安谷屋祐子 中野あき
日出郎(Wキャスト) 田口舞(Wキャスト)
※11/14~18 田口舞出演、11/19~25 日出郎出演
企画・制作:雀組ホエールズ

公演日程:2018年11月14日(水)~11月25日(日)
会場:シアターグリーンBOX in BOX THEATER
料金:前売り券 4500円(全日時指定・全席自由)/25歳以下割引 2500円(証明書提示・予約のみ)/当日券 5000円/中学生以下無料(要予約。乳幼児はご相談ください)
詳細はこちら↓
https://satousuzume.wixsite.com/suzumegumi/vol-14