Stagebook MAGAGINE

舞台・演劇情報「Stagebook MAGAGINE」

ロロ主宰 三浦直之

関係が変わったり、結ばれてたり、離れたり、時間を超えて行われていくというヘンテコさ。ー ロロ主宰 三浦直之

こんにちは、Stagebookの尾中力也です。
今回はロロ×キティエンターテインメント・プレゼンツ『父母姉僕弟君」通し稽古の現場に潜入し、主宰の三浦さんにお話を伺いました。

まず三浦さんとロロ、自分たちの環境・カンパニーについてなどお伺いできればなと思ってます。

三浦 僕は宮城出身なんですけど、映画を撮りたくて日本大学藝術学部の映画学科を受験したら落ちてしまって。違う学部でもとりあえず入っとけ!と思って、たまたま演劇学科は受かったので、演劇あんまり知らないけど入学しました。

宮城だとなかなか生で演劇を見る機会もなかったので、上京していろいろ観るうちに面白いなーと思って、それで(当時)同期の仲間たちと一緒に始めたのがロロ...ですね。

ロロ主宰 三浦直之

尾中 いま結成して?

三浦 8年ですね。

尾中 なるほど、なるほど。ロロさんって、先輩後輩も一部いらっしゃる中、若い人たちだけで構成されていると思うんですが、若いからこそこういうことができるんだ!みたいなことはあったりするものなのでしょうか?

三浦 若いから、というのとはまた変わってしまうかもしれませんが、一緒に時間を過ごしてきた同世代の仲間たちなので、通って来ているカルチャーとか、すごく似ているんですよね。
僕は小説とか、マンガとか、映画とか、いろいろなポップカルチャーに影響を受けていて、その断片がちりばめられているような作品が多いと言われます。

尾中 (今日、通し稽古を拝見して)それは僕自身も感じましたねー!

三浦 メンバー間で、「(あの時の)アレのアレー!」みたいな共通言語が多くて、それは同世代の仲間たちならではだと思います。
でも最近は、僕も今年30歳で、今までは若くてキラキラしているところを面白がってもらえてるとも思うんですけど、じゃあそこからどうやっておじさんになっていけるかって、集団としての移行期でもあるなと感じています。

尾中 では、30歳っていうのが、ある意味、カンパニーとしても節目みたいなところもあるわけですね。まぁ、実を言うとですね、僕も今年30歳と同い年でして…

三浦 同い歳なんですねー!!

尾中 はい、実はプロフィールを拝見しながら、今日は楽しみだな〜と言うふうに…。

三浦 そうなんですね。もっと大人っぽい印象です(笑)

尾中 いやいや…。(照笑)

映像作品も手がけられている中で、今回、生の演劇だからこそ伝えたいこと、こういう風に観て欲しいなとか、こだわりなどあったりしますか?

三浦 例えばロードムービーみたいなものは、本当は演劇と相性が良くないと言うか、ロードムービーって景色がどんどん移り変わっていくじゃないですか。映画だと移り変わる景色をそのまま撮ることができるけど、演劇は舞台上という限定された空間で、景色を変えていくのがなかなか難しいんです。
演劇は、観客の想像力を利用して、どうやってお客さんの頭の中に景色を立ち上げていくかの作業がとても面白いです。
例えば、宇宙の話を書きたいなと思ったときに、演劇だったら、たったひとことの言葉でお客さんの頭の中に、宇宙空間を立ち上げることができる。言葉の力で観客の想像力を掻き立てるのが、演劇の醍醐味だなと思ってやっています。

今回の舞台は5年ぶりの再演だと思うんですが、何故やることになったんでしょう?

三浦 9月に『BGM」というロードムービーっぽい新作を上演することは決まっていて、(公式サイト)』その次はどうしようって考えたら、「旅」シリーズにしてみたらいいのではと思いついたんです。
実はこれ、自分でもなんでかよくわかっていないんですけど、僕の作品に繰り返し出てくるモチーフなんですね、旅って。
この『父母姉僕弟君」と、さらにその前、2010年に『旅、旅旅」って作品を上演していて。いい機会なので、僕自身が自分の記憶を辿って旅するみたいに、過去作品の旅シリーズをやってみようかなと思ったのが経緯です。

通し稽古中の三浦氏

通し稽古中の三浦氏

尾中 今回の再演、初演と大きな違いはありますか?

三浦 基本的に脚本はそのままなんですけど、いろんな演出的なアプローチを試してアップデートしています。
5年前の脚本を読み返してみたら、当時の感覚より、今の自分の方が面白いなって思い直せたんですよね。
だから無理にいろんな情報を足していくんじゃなくて、物語の核の部分が際立つように作っていきたいなっていうのが、今回のモチベーションですね。

尾中 新たに、音楽で曽我部恵一さんを招いたのも、そのモチベーションからですか?

三浦 そうです。高校生の時から好きでよく聴いていたミュージシャンで、ロロの「いつ高シリーズ」っていう公演で、曽我部さんの曲をこっそり使わせていただいていたら、曽我部さんがtwitterで反応してくれたんですよね。

尾中 へー!それはすごい!

いつ高シリーズ

三浦 曽我部さんが「観に行きたいと思っていたら(公演が)終わってた」みたいなことをつぶやいてくれたんです。それで今回、憧れの曽
我部さんに劇中曲を書き下ろしていただけないかとオファーしたら、快く引き受けてくださいました。

尾中 なるほど、なるほど、それは本当素晴らしいですね。

尾中 衣裳の伊賀大介さんもそういった感じだったんですか?

三浦 伊賀さんは2014年頃からロロの公演を観てくださっていて、旅の話が続く中でビジュアルとしての印象も変えたいし、いつかご一緒してみたいなとずっと思っていたので、今回思い切ってお願いしてみました。

尾中 今後、ロロとしては、どうなっていきたいですか?

三浦 どうなんですかね~。やっぱり劇団を続けてくのってなかなか難しいですね。
ちょうど年齢的にも30代になって、メンバーそれぞれが先のことも考え出すターニングポイントでもあるので、その中でどうやって集団を運営していくか、どういう風に続けていくか、続けていけるかっていうのを今、悩みながら考えています。劇団っていう集団をきちんと守っていくのは、これから演劇をやりたいっていう若い人たちにも、ひとつの方法として何かを示せたらいいなとは思っています。まだ、全然見つかっていないんですけどね。

尾中 ありがとうございます。

 

最後に、初演を観ていただいている方、初めて観る方に向けて観どころやメッセージをいただけたら。

三浦 初演も観てくださっている方は、前回のあの面白さもきちんと残っているし、初演に出ていた俳優も出ているので、楽しんでいただけると思います。
特に俳優たち、僕も「上手くなったなー」ってすごく感じているので、その俳優の歳とってる感じ、歳を重ねていい味がでている感じが、うまく伝わるといいですね。
たまたま偶然乗り合わせた人との結ばれる関係性が、いつの間にか家族っぽかったり、父と子が逆転したり、どんどん関係性が変わったり、結ばれたり、離れたり、それが過去・現在・未来という時間を超えて行われていくヘンテコさが、初めて観る方にもうまく伝わるといいなと思っています。

尾中 5年前の三浦さんの記事を拝読したんですが、「仕方なく」っていう表現をされてましたね。「仕方なく」旅をしている中で、「仕方なく」出会って「仕方なく」こう...なっていくという。

三浦 それだいぶ前な気がするけど、いいこと言ってるな!(笑) 仕方なさっていうのが、ポジティブなものになるといいですね。

脚本・演出|三浦直之​ Miura Naoyuki
ロロ主宰。劇作家。演出家。1987年10月29日生まれ。宮城県出身。
2009年、処女作『家族のこと、その他たくさんのこと』が王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」に史上初入選しロロを立ち上げ。自身の摂取してきた様々なカルチャーへの純粋な思いをパッチワークのように紡ぎ合わせ、様々な「出会い」の瞬間を物語化している。2013年、初監督・脚本映画『ダンスナンバー 時をかける少女』がMOOSIC LAB 2013 準グランプリなど3冠を達成したほか、ドラマ脚本提供、MV監督、ワークショップ講師など演劇の枠にとらわれず幅広く活動。2015年より、高校演劇のルールにのっとった60分の連作群像劇「いつ高シリーズ」を始動し、高校演劇の活性化を目指している。『ハンサムな大悟』で第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。2017年度セゾン文化財団ジュニアフェロー。

キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」

旅シリーズ第2弾!
​ロロのボーイミーツガール集大成、待望の再演!!

2009年の旗揚げ以来、漫画・アニメ・小説・音楽・映画などジャンルを越えたカルチャーをパッチワークのように紡ぎ合わせていく作風で、小劇場シーンの「恐るべき子どもたち」として注目を集めてきた劇団「ロロ」の三浦直之。
「ボーイ・ミーツ・ガール」をテーマに、他者との出会いと別れを描き続けるポップで切ない作品群は、演劇にとどまらず、映画やテレビドラマなどにも姿を変え、そのキラキラとした輝きを放ってきた。

2012年にロロ8本目の本公演として初演された『父母姉僕弟君』は、王子小劇場2012年度佐藤佐吉賞において、最優秀主演女優賞・優秀作品賞・優秀主演男優賞・優秀照明賞・優秀音響賞・優秀衣装賞を受賞。
妻を亡くした男は、妻との思い出の地を目指して旅をする道中、奇天烈キャラクターたちと出会ったり別れたりを繰り返し、家族をつくっていく。
忘れたくないのにどうしても忘れてしまう、記憶の中の妻を思い出しながら、約束の場所を目指す。

三浦直之が描く、ちょっとヘンテコな家族のかたちとボーイ・ミーツ・ガールが、キティエンターテインメントプロデュース公演として、この秋新たに蘇える!

ロロ×キティエンターテインメント
『父母姉僕弟君』

2017年11月2日(木)~12日(日)
シアターサンモール

作・演出|三浦直之(ロロ)
音楽|曽我部恵一
衣裳|伊賀大介

出演|亀島一徳 篠崎大悟 島田桃子 望月綾乃 森本華 緒方壮哉 北村恵 多賀麻美 田中佑弥 松本亮

美術|中村友美
照明|富山貴之
音響|池田野歩
舞台監督|鳥養友美
演出助手|中村未希(恥骨)
デザイン|佐々木俊
制作助手|田中亜実(劇団女体盛り) 奥山三代都(ロロ)
制作協力|宮永琢生(ままごと/ZuQnZ)
アシスタントプロデューサー|坂本もも(ロロ/範宙遊泳)
ゼネラルプロデューサー|永田悦久(キティエンターテインメント)
プロデューサー|多賀英典(キティエンターテインメント)

協力|ロロ コムレイド écru 青年団 レトル ワワフラミンゴ 中野成樹+フランケンズ
ROSE RECORD 恥骨 劇団女体盛り ままごと ZuQnZ 範宙遊泳 森下スタジオ ローソンチケット

助成|公益財団法人セゾン文化財団
企画制作・主催|(株)キティエンターテインメント

公式サイト:https://www.llo88oll-kitty.com/
ロロ公式サイト:http://lolowebsite.sub.jp/