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石丸さち子、東啓介、青野紗穂インタビュー  New Musical『Color of Life』で魅せたい繊細さとダイナミックさとは?

ミュージカルといえば、大人数のアンサンブルをイメージする人が多いかもしれない。2019年4月26日(金)のプレビュー公演、新元号、令和初日となる5月1日(水)から27日(月)まで上演されるNew Musical『Color of Life』は、出演者がたった2人。そしてミュージカルでは珍しい対面客席を設えたDDD青山クロスシアターが会場となる。

今回は、出演の東啓介さん、青野紗穂さん、そして演出を手掛ける石丸さち子さんに稽古場でお話を伺うことができた。2人だけで物語を紡ぐミュージカルがどのような作品になっていくのか、現在の心境を語っていただいた。

 ――New Musical『Color of Life』の上演が決まった時の気持ちをお聞かせいただけますか?

石丸:『Color of Life』は出会いの芝居ですが、今回新しい出会いを呼んできてくれたと思い、本当にうれしかったです。ニューヨークでの初演、シアターイーストでの日本初演、銀座 博品館劇場での再演と、3回演出をやらせていただきましたが、今回は対面客席ということ、今までで一番若いキャストということで、新作を作るような気持ちで立ち向かおうと思っています。

前回の公演では、出演する2人が白いキャンバス上に色を生み出していく演出にしました。真っ白な舞台と評判になりましたが、今回はこれを一気に捨てて真っ黒な宇宙の中に色が生まれていく舞台にしていこうかなと思っています。若いキャストと出会ったことで、私自身がこの作品の新しい魅力と出会うことになって本当に喜んでいます。

東:僕は以前この作品を拝見させていただきましたが、まさか自分が2人ミュージカルに出演できると思っていなかったですし、こうやって呼んでくださったことに対してものすごくうれしい気持ちになりました。新しい『Color of Life』を作れたらいいなという思いから、1週間ニューヨークへ行って勉強したり絵を見たりして稽古に臨んでいますが、難しいですね(笑)。対面客席は経験がないですし、いろいろな要素がギュッと詰め込まれている作品なので、うれしさとともにプレッシャーも感じています。

青野:私はすごく不安が大きかったです。最近ミュージカルのお仕事をさせていただいていますが、せりふが多い役があまりなかったので力不足にならないかと。今回の作品を通して今の自分に必要なものを得るだろうと気づいてはいたのですが、いろいろな不安が押し寄せてきました。とてもありがたいことですし、新しい自分が見つかったり、足りないものや殻に閉じこもっている部分から抜け出せるんじゃないかという思いがあったので、この仕事を受けさせていただきましたが、まだ苦戦していて大変です。でもいろいろな観点から(石丸)さち子さんにご指導いただいているので、すごく楽しいお稽古をさせていただいています。

石丸さち子

――対面客席のDDD青山クロスシアターでミュージカルというのは意外に思いましたが、ニューヨーク初演も小規模の劇場で上演したのですね。

石丸:今回の舞台はニューヨークとは全然違うものになると思います。最初はどうなるかなと机上で想像していましたが、たまたま演出をする前にロンドンへ行って何本か芝居を観た中にヒントがありました。対面客席では両方から観られているので、両方に顔を見せなければいけないのでは……と思っていましたが、「存在する」ということに意識を向ければ、客席に顔を見せなくてもいけるのではないかと思っています。

この物語は出演する2人が出会うことによって自分自身をも見つけていく話です。存在さえしていれば、人間は背中にも人生があるので、後ろを向いていても平気になります。でも「存在する」というところで、今2人は一番苦戦しているところです。

青野紗穂

――話の展開が「さすが若い2人だけあって勢いがある」と感じる一方で、「2人ともすごく繊細だな」と思ったりもしました。繊細さと大胆さを出すのに、どのような工夫をしていますか?

青野:今は必死に足をバタつかせている状態なので、繊細なものや熱いものを感覚的に意識していないです。ただ、最初に台本読みをさせていただいた時にさち子さんが、私たちが出会ったこと、さち子さんと(作曲・編曲の)伊藤さんが出会ったことを大事にしてこの作品を作っていきたいとおっしゃっていました。私とさち子さんが出会えた奇跡や、私と東くんが出会えた奇跡を大事にしながらやろうと毎回稽古で思っています。

今は必死になっているので、「ここはすごく大胆にいこう」とか、「ここはものすごく繊細な部分だから」と意識してあまりやれていないですし、すごく難しいですね。(東さんに向かって)どうぞ!(笑)

東:言葉で簡潔に言うのは難しいですけれど……。今まで稽古をやってきて、ものすごく時間をかけて気持ちをしっかり動かすとか、何かを感じてから動くとか、そういうことを意識して繊細さを表現しています。

このお芝居は時間のジャンプがあるので、気持ちとは裏腹に飛ばさなければならないものがあります。クールな頭とホットなハートを持って切り替えをしなければいけないので、どちらかに偏るとやりすぎになるし、その混ざりあいがすごく難しいですね。模索中です。

石丸:ミュージカルの魅力は、「この音しかないんだ!」というトレーニングされた体と声帯から出てくる繊細な声で一気に自分が人を好きになった時のことがワーッと蘇って、それだけで涙が出てくるという経験と鍛えられた歌声で、どこまでもダイナミックな世界に連れて行ってくれるという両極のところにあると思っていて、この作品にはこの両方があります。

また最近の人たちは、日本語の柔らかいニュアンスのある繊細な言葉で、相手を思いやることが少なくなってきている気がするので、私たちがよく使う言葉の中にこれだけの愛情が入るんだということをやりたいと思っています。歌では、「この音しかない」という繊細なことから「この巨大さ」までということをやりたくて、とても難しいのですが、誰かを愛したり、この人と本当にぶつかり合いたい、分かり合いたいと思った時のスパークする熱を実現したいです。

東啓介

――今回の作品は素晴らしい楽曲の数々も魅力だと思います。どのように歌おうと思っていらっしゃいますか?

東:これが難しいんですよね(笑)。聴いている人はたぶん心地良いと思うのですが、やっている側はいろいろな技術を駆使しないとなかなか成立しません。昨日の通し稽古では、2人がソロシンガーすぎてデュエットがデュエットに聞こえないと言われたので、そういう苦戦はあります。王道だけれど王道じゃないところも大きくあるので試行錯誤しています。

青野:今までも難しい教会音楽やジャズやブルースをセッションしながら学んできましたが、それらが足元にも及ばないレベルでの難しさがあります。顔の前にマイクがあってそこで響かせて音程やリズムを取り、感情をお客さんに伝えることが今までやらせていただいた楽曲では成立していたのですが、今回は一筋縄ではいかない何か大きな壁を感じています。

よくさち子さんが「ここは宇宙に行くんです」とおっしゃるのですが、まさにさち子さんや伊藤さんが生んだ楽曲は、地球におさまらないものだなと思っています。先ほど東くんも言っていましたけど、聴いている人はすごく気持ちが良くて、心が温かくなったり揺らいだりする音楽なので、そこを上手く私たちが表現できればいいのですが、今は暴れ馬に引きずられている状態です。でも本当に素敵な楽曲で、一つひとつの音や言葉を無下にできませんから、なんとか頑張って食らいつこうとしています。

石丸:まあ、苦しむだろう。

(一同爆笑)

石丸:これは時間の物語でもあって、台本の中で描かれている3カ月の生活は歌の連続でしか語られていません。ですので、歌うことで時間の流れが語られていきます。

1曲の歌の中で、時間や場面設定が変わるので世界観がものすごく多岐にわたります。それを伊藤さんが見事に楽曲で表現してくださっていて、そこを理解するということが台本を理解するということになります。初日を迎える時に初めて歌が自分のものになった、歌がつかめたと感じるのではないかというぐらい巨大な曲です。

今までの経験値や技術だけでは足りない、いろいろな心の機微が必要とされるので、たぶん役を見つけることが歌を見つけることになっていくのではないかと思います。振付の前田清実さんが「難しいけど、これをやったら怖いものないよ」と言うほど技術的に難しいです。この曲たちが持っている振り幅の広さを彼らがどこまで表現してくれるのか、そしてありがたいことに公演期間が長いので、お客様に聞いていただくことによってどんどん彼らも成長すると思うので、どういうふうに育っていくか、とても楽しみにしています。

――お二人はこの舞台を何色に染めたいと思っていますか?

 東:オレンジです。オレンジってあたたかいイメージがあるので好きなんですよ。お客さん一人ひとり色が違ってもいいですが、会場がオレンジ色のあたたかな感じになっていけばいいなと思います。

青野:私は赤がいいです。東くんもそうでしたが、最初に出会った人に私の第一印象が赤っぽいとすごく言われるんです。この作品の中でも最初に私を見て生まれる色が赤ですし、情熱ではなく幸せにカテゴライズされた色として生まれるので、今、幸せというものをどう表現するか模索中ですし、この舞台が赤になればうれしいなと思っています。

――石丸さんは「真っ黒な宇宙の中に色を生み出す」とおっしゃっていましたので、やはり黒ですか?

 石丸:いや、私は虹です! 曲を作ってくださった伊藤さんのお姉さんが画家で、この物語の主人公を画家にしたのもその影響があるのですが、この間拝見した7色の絵が素晴らしくて……。雨降って地固まるではないけれど、雨が降ったあとに、あんなに美しいものが見えるというのは本当に奇跡で、神様はあんなにきれいなものをよく作ったなと思っているんです。この作品も、たくさん雨が降ったあと一気に晴れて虹が見えるような芝居だと思うので、虹色にしたいです。

――公演を楽しみにしている人に向けてメッセージをお願いします。

青野:まだ本質がつかめていないにしろ、この作品と出会ったことは、何かを得たり、新しいものが見つかったり、本来の自分をちゃんと見つめなおしたりして、「私」という人間の枠にとらわれない新しい道が開けるような作品だと思います。

作品自体が出会いの物語なので、観に来てくださったお客様同士の出会いやその人たちと私たちが出会う奇跡を一緒に感じていただければありがたいなと思います。対面客席なので、毎回違う位置から観て、また新しい世界が広がっていくのを見ていただければと思います。

東:『Color of Life』は出会いの奇跡というのもありますし、自分探しもテーマの一つだと思うので、観ていただいた人に、ぜひ誰か友人と連絡をとりたいと思ったり、何か行動を起こそうと思っていただく場にしていただいてもいいと思います。楽曲に関してはいろいろなジャンルのものが入っているので、その中に素敵な言葉がちりばめられています。何度か来ていただいて、こういう素晴らしさが音にあったのかとか、これはこういう意味だったんだ!というのを発見していただくのも魅力の一つだと思います。

石丸:この作品は2人だけの芝居ですが、ミュージカルの醍醐味がたくさん詰まっています。本当にミュージカルが好きな方には「ああ、観て良かった」と思っていただけると思いますし、ストレートプレイが好きな方にも、人と出会うってどういうことなんだろうという繊細な思いがたくさんつまっているので、まだ若い2人の心がグイグイ動くのを、手に取る近さでご覧いただいて、ドキドキしていただけると思います。そして劇場をあとにするときには、あたたかいハッピーな気持ちになっていると思いますので、ぜひ体験しに来ていただきたいです。

取材・文:秋乃 麻桔
撮影:尾中 力也

【公演名】

New Musical『Color of Life』
脚本・作詞・演出:石丸さち子
作曲・編曲:伊藤靖浩

出演:東啓介 青野紗穂

【公演日程】
プレビュー公演
2019年4月26日(金)
会場:相模女子大学 グリーンホール 多目的ホール
チケット料金:6,000円(全席指定・税込)
※未就学児の入場はご遠慮ください。

2019年5月1日(水・祝)~27日(月)
会場:DDD青山クロスシアター
チケット料金:8,000円(全席指定・税込)
※未就学児の入場はご遠慮ください。

【公演に関するお問合せ】

ワタナベエンターテインメント
03-5410-1885(平日11:00~18:00)

【公式ホームページ】
https://coloroflife.westage.jp/

【各種プレイガイド情報】

■チケットぴあ
http://w.pia.jp/t/col2019/
TEL:0570‐02‐9999(Pコード:492‐184)
セブン-イレブン、チケットぴあ店舗(直接購入可能)

■ローソンチケット
https://l-tike.com/order/?gLcode=33213
TEL:0570-084-003(Lコード:33213)
ローソン・ミニストップ店内端末「Loppi」(直接購入可能)

■イープラス
https://eplus.jp/coloroflife/
ファミリーマート店内端末「Famiポート」(直接購入可能)

■カンフェティ
http://www.confetti-web.com
0120-240-540*通話料無料・オペレーター対応(受付時間 平日10:00~18:00)

【チケットに関するお問い合わせ】

■チケットぴあインフォメーション
0570-02-9111(10:00~18:00)

【アフタートーク】
5月3日(金・祝)17:00公演 ゲスト:相葉裕樹
5月4日(土・祝)17:00公演 ゲスト:納谷健
5月9日(木)19:00公演 ゲスト:上口耕平
5月10日(金)19:00公演 ゲスト:渡辺大輔
5月15日(水)19:00公演 ゲスト:松岡充
5月16日(木)19:00公演 ゲスト:前島亜美
5月17日(金)19:00公演 ゲスト:三津谷亮
5月22日(水)19:00公演 ゲスト:三浦涼介
5月23日(木)14:00公演 ゲスト:前山剛久

※司会進行は、10日・16日は青野紗穂、その他の回は東啓介が担当

公演の映像を下記で公開していますので、ぜひご覧ください。
https://m.youtube.com/watch?v=fCcLQKqCIqQ